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て載然と分けることは難しい。このような川柳界の枠外でブームとなっているのが『サラリーマン川柳』に代表される第三の川柳で、コンクールヘの応募は年々、増加の一途をたどっている。
このほか、企業がPRの一環として募集しているものもあり、こうして川柳が多くの人によって作られ、そして読まれるのは、普及という点では結構なことだが、問題はその質である。
以上は、『大阪府文化芸術年鐘』(一九九六年版)に、「川柳―三つのタイプ」と題して私が執筆した文章の一節である。さらに付け加えると、日刊新聞の全国紙・地方紙をはじめ、各団体・政党の機関紙誌や週刊誌にも川柳欄が設けられており、そこで作られ、読まれている川柳となると、にわかにその実態をつかむことさえ困難である。
いま、川柳はブームにのっていると言われているが、それは、これまでに挙げたさまざまな川柳をトータルしたものが量的に増大していることを示している。しかし、その中核をなすものは、やはり第一・第二のタイプに属する柳社と、その全国的団体である全日本川柳協会であり、やがて量を質に転化し、川柳の健全な発展を期するためには、各柳社の同人はじめ指導的立場にある人たちのたゆみない努力にまたなければならない。
ところで今回、誌上大会の第二次選者として作業をするにあたり、いろいろと考えさせられるところがあった。この第二次選者という制度は、いつから設けられたかは知らないが、第一次選者が選んだ秀句の中から最優秀句などを選び出す任務のほかに、選ばれた句の中に同想句や類想句はなかったか、さらに作品の内容・表現に問題はないかをチェックするという役割が課せられている。
それは、過去に最優秀句またはされに準ずる賞を受けた作品の中に、それにふさわしくないものが現実にあったからである。今回の場合、一例だけ挙げると、
晴天だ翼ください車椅子が複数の第二次選者の間で問題となった。たしかにインパクトのある秀句ではあるが、身体障害にからむものだけにデリケートな問題を含んでいる。こういう判断はかなりのリスクを伴うものではあるが、やはり疑わしきはオミットすべきであろう。特に差別問題に関心が高くない選者の一考を促したいと思う。

 

 

 

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